記事一覧

「そうさく畑66」御礼&神戸散歩

 4/1の「そうさく畑66」、ありがとうございました。
 当ブースにいらしていただいた皆さん、そして買い物や交流を楽しませて下さった他ブースの皆様にも感謝です!

 会場入口の真ん前という微妙な(笑)配置ながら、当ブースも順調でした。
 3刷を数えたロングセラー『ハイケンスのセレナーデ』、ついに完売。舞台である寝台特急「日本海」廃止とともに…。
 その他の既刊も、最新刊ともう1種類を残して"残部僅少"に。
 まさか、二番目に新しい『夢の途中』までが残り10部を切るとは…感謝感激です。

 次回は5/6「文学フリマ」ですが、都合により今回は委託参加になります。詳細は追って。

---------------

 さて、そうさく畑参加の真の目的=神戸旅行(ぉぃ)。
 前夜の宿はもちろん、昨年のこの記事で紹介した温泉カプセル。
 そして今年のイベント終了後は、往復割引めあてで明石まで買った切符(※1)を実際に明石まで使用。

 小休止してから午後4時過ぎに、前夜に途中下車した三ノ宮駅に入場。
ファイル 52-1.jpg
 三ノ宮~兵庫までは戦前からの高架駅。
 ホームの屋根の他、高架下の駅構内に古い造りが残るのも魅力。
ファイル 52-2.jpg
 元町、神戸と各駅で途中下車。
 大都会の駅にして間近に山が見える風景を楽しむ(写真は神戸駅にて)。列車も特急や貨物列車を含めて多彩。
 気がつくと午後5時半を回っている。新快速で西へ。
ファイル 52-3.jpg
 須磨の先から垂水の手前、垂水の先から朝霧の手前まで間近に海が見え続ける。遮るものがない中、対岸には泉州の山や淡路島の緑も。
 三ノ宮から十数分、大阪からでも四十分。次回はこのへんで降りてみようか…。
 東京の通勤圏にこんな場所はない。根府川付近で海は見えるが、一瞬だし東京から一時間半はかかる。
 同じ大都市圏なのに神様は不公平だと小一時間(笑)。

 明石は、着いたらもう残り時間がなく、何の変哲もない郊外駅の眺めしか見られなかったので割愛。

ファイル 52-4.jpg
 明石からは帰りの切符を使用。新神戸へ行くべく三ノ宮で途中下車(※2)すると、早くも6時半前。
 ただ往復したら1時間もかからない行程だったのだが…日が長く、そして阪急電車の見える景色がうれしい。
 帰りの新幹線まで2時間少々。阪急のガード沿いに歩いていく。
ファイル 52-5.jpg
 ガードの向かい側は飲み屋街。それが尽きるやや手前の地下に、海鮮メインの居酒屋(名前を控え忘れた…汗)。
 鮪のなめろう、鮪の竜田揚げ、鮪のメンチカツ、鮪のチャーシュー(日本語が変だろ)…と、鮪の変わり料理が売りだった。
 メンチカツ(写真)やチャーシューは見た目も食べでも肉料理そのもの。でもたしかに魚の味がして、そしてカロリー表示を見ると大変ヘルシー。
 まあヘルシーといっても、このあとラーメン食べたりするので意味半減なのだが(笑)。
 そして地下鉄で新神戸へ行き、新幹線に乗り、来年は明石でたこ焼きを…などと思いながら眠りにつく。
 もちろん、そんな機会を与えてくれる「そうさく畑」にも感謝しつつ。


(※1)
 往復同一経路・片道あたり600キロ超の乗車券を往復で買うと、往復とも各1割引になる。
 東京都区内発だと明石が600キロ超の最初の駅になり、明石まで往復で買った方が、大阪市内や神戸市内まで普通に切符を買うより若干だが安くなる。
(※2)
 新神戸・三ノ宮は約2キロ離れた別の駅だが、神戸市内を経由する乗車券の場合は、一方で途中下車して他方に乗り換えられる。
 神戸市内が目的地の乗車券でも同じだが、自動改札だと下車時に回収されちゃうので有人改札へ。

不思議なロープウェー

 同人誌イベント「そうさく畑」参加のため、神戸へ。本番は日曜だけれども、親戚づきあいを除けば一年ぶりの関西。空いているなら前日から出かけない手はない。
「さぁて、どこへ遊びに行ってやろうかな~!」
ファイル 12-1.jpg
 …が、勇んで降り立った昼過ぎの新神戸駅は、激しい雨が満開の桜を叩き落とす悪天候。濡れネズミで三宮の宿へ着くともう出かける気にはならず、しかも書きかけの作品と間違えて仕事の書類を開くや、いつの間にかそちらに集中してしまう………そして気づくと外は夜。東京にいるのと変わらず、休日ですらないじゃないか…。
 ただし、雨は上がっていた。宿の前の通りを渡ると、六甲の山上にある建物の灯が間近にくっきりと見える。
「やっぱり、神戸にいるんだ…」
 現金にも今度は浮かれて歩くうち、北に山手幹線、西に生田神社の森という一角に入り込み、柄にもなくバーのような場所へ寄って散財してしまった。バーテンを務めるお嬢さんに声を掛けられるまま、たわいのない話が進んでいく。
「温泉があるような深い山がすぐそばに見えるってのは、いいよねー…おかげで夏暑いけど」
 東京から来たいい年の迷子を珍しがってくれたお礼に、さっき見て思い出した神戸のよさを褒めると、まだ学生だというお嬢さんは、そらそうや!とばかりに快活そうな目を見開いて答える。
「うん、山近いで!東京はずーっと街ばっかやもんなぁー」
そこで少しだけ間を置いてから、思い切ったように笑って、もう一言。
「東京は一週間いたら、それでもうええって感じ!」
 よくぞ言ってくれた。東京には空が、もとい、山がない。神戸と言えばやっぱり、目の前に山がある景色だ。そしてこの近さなら、明日イベントが終わってからでも…。
ファイル 12-2.jpg
 果たして翌日の十五時半にイベントが終わるや、快晴の空の下へ筆者は飛び出した。同じく三宮で十八時から打ち上げだが、余裕である。目指すは地下鉄で北へ一駅、山裾のどん詰まりの新神戸駅から山上へと延びる、その名も「新神戸ロープウェイ」。駅前から観光ロープウェイが出ているとは、実に効率がいい。

 しかし、駅前ではなかった。
 車寄せで見つけた案内板にならい、人通りの少ないデッキを南へ。山頂は北側だから方角的におかしいのだが、デッキの向こうはランドマークと言えそうな新しめの巨大建築で、なんとなく信用して進む。しかし、どう見ても裏口みたいな位置からその建物に入ると、中は駅ビルの食堂街をうんと狭くしたような一角で、おまけに静まり返っている。
「…数日遅れのエイプリールフールか?」
と思いきや、そこでまた案内板を発見。従うままに歩くとやがて吹き抜けのショッピングモールが現れ、アイスクリームをなめる普段着の家族連れを横目に階段を下りるうち、とうとうビルを通り抜けてしまった。さらにビルを回り込むようにして歩くと、ようやく「ロープウェイ入口」。なるほど、北向きに伸びた遊歩道を帰り客らしい人々が下ってくる。けれども道の先にロープウェイ乗り場など見えない。登ってカーブを曲がり、さらに斜面を上がっていくと、ようやくゴンドラを吐き出す駅舎が見えた。
 つごう十分あまり。時間を食い、発車時刻が合うかどうか心配になっていたが、幸いスキー場にあるような四人乗りのゴンドラが連なったタイプで、かつ夕方のせいか空いていた。
「文句言ったら、『新神戸』じゃなくて『新・神戸』なんです、とか言うんだろうか?」
 …急ぎじゃなければ十分歩くぐらい構わないのだが、道順が観光施設のそれじゃない。客が集まるのか?
ファイル 12-3.jpg ファイル 12-4.jpg
 でも見晴らしは乗ったそばから素晴らしく、恐ろしいほどだった。
 …いや、高所恐怖症の筆者は本当に恐ろしかった。上で書いたビルは約四十階建てなのだが、そのてっぺん【写真左】が一分ほどで目の高さに来て、しかもビル付近の地上が同時に目に入る。うわ恐っ!と思って身を沈めると、小さなゴンドラがグラリと揺れて余計に恐い。
「ひぃー……。ロープウェイって、こんなに恐かったっけか?」
 視界の真正面が一面の平地。しかも市街地だから、高さを感じさせる物体が嫌というほど見える。ロープウェイのキャッチコピーで「空中散歩」というのをよく聞くが、たいていは視界の正面には隣の山があって、下を見下ろさないと宙に浮いた気にはなれない。でも、ここは正面を向いたままで空中散歩ができる。
 …とはいえ三分ほどすると傾斜がやや緩み、山も深くなってきて眺めが落ち着く【写真右】。山の緑と百万都市が、両方同時に見える。これもロープウェイの眺めとしては珍しい。
 見とれて、あれやこれやと写真を撮っているうち、途中駅「風の丘」(右写真下部)。途中駅というのも珍しかったが、周囲には何もない。ただ下り乗り場には人の姿があって、係員の手で開けられたドアから乗り込むグループを見た。どこへ何しに行ってきたんだ…?
 ともあれ全部で十分ほどで、山上の終点「布引ハーブ園」駅へ。
ファイル 12-5.jpg
「うわ、もう五時近くか…」
 でも心配は無用だ。山上には見晴らしのための小さな広場と軽食堂、それにハーブのグッズを並べた店があるだけで、その外側にある森林へは行こうとしても行けない。下に向かってだけ道があり、ハーブ園とやらに続いているようだが、とにかく周囲の人影は多くなかった…静かなのは好きだし、見る場所の少なさは時間がない筆者には好都合だけれども、往復1,200円のロープウェイに客が集まっているのか心配になる。
 眺めて写真を撮って、一服してから下りに乗車。
「せめてハーブ園の外観だけでも見てやろう」
 下を眺め、山頂からの小径を目でたどる。ほどなくハーブ園の建物は見えたが、屋外に草花が見えるわけじゃなく、そして小径はハーブ園を過ぎてもなお続き、ロープウェイの右になったり左になったりしながら一緒に山を降りていく…その、日が傾いて緑が濃くなった道を、家族連れやアベックが三々五々歩いている。見ているうちに先ほどの途中駅。前のゴンドラのドアを係員が開け、道を降りてきた人々が乗ってきた…。
「ああ…このロープウェイって、市民の散歩道だったんだ」
 なるほど、それなら上にたいしたものがなくても構わない(ハーブ園に失礼だな…)。そしてショッピングモールの脇から出ているのも、むしろ目的に沿っている。遠方からの客も絶無じゃないだろうけど、人々はいずれも普段着の軽装で、市内か、遠くても明石や大阪からといったところ。どちらにせよ、ロープウェイで登る深い山が気軽な散歩道だなんて、東京の人間にはうらやましい限りだ…。
「やっぱり山がすぐそばにあるって、いい街だなあ…」
 水平線とその下に見える臨海部、そして、山の続きで傾斜しているのが分かる幅の狭い街を見下ろしながら、筆者は神戸を見直していた。

 ちなみに、春・秋の土曜休日と夏休み中の全部は、夜九時前まで山頂に滞在できるようロープウェイが動いている。夜景もきれいだろう。
 もう一つ。下の駅へ戻った後、遊歩道にあるカーブを曲がらず直進して先出のビルに沿うようにして歩くと、ビルと新神戸駅とを結ぶデッキにあっさりたどり着いた。いったい何だったんだ…。

山道と温泉~もうひとつの東海道線をゆく

【「東海道線鈍行の旅」の旅程・弁当・温泉に関する参考資料がこちらにあります】


 帰省先・大阪にて。

 岡山名産「あたご梨」(叔母の土産)。規格外れにデカい動植物というのは普通まずいのだが、大きい分だけ梨の味と水気を満喫できた。


 さて、帰りは1月3日。手元には相変わらず「青春18きっぷ」しかない。
 行きは"東海道本線"を忠実にたどってきたので、今度は「本当の"東海道"」をたどることを考える。となると草津で東海道線を離れて南東に進み(草津線)、伊賀国・柘植で関西本線(大阪~奈良~名古屋)に乗り換えて→亀山→桑名→名古屋となる訳だが、これだと関西線の列車に途中駅から乗ることになる。この区間の関西線は需要ギリギリまで本数・両数を絞った超ローカル区間。そういう場所は「18きっぷ」シーズンだと、限られた列車に旅行客が集中、ときには殺到する。
 そんな訳でややアレンジして、京都から奈良線で木津(奈良の2つ北隣)まで下り、そこから関西線に乗ることにした。木津の1つ先・加茂が、以東の「超ローカル区間」の始発駅である。

 10時すぎに、東海道線の快速電車で大阪駅を出て、高槻で後から来る新快速に乗り換え。正月らしいのんびりした車内。
 が、京都で降りて奈良線ホームへ行くや、通勤ラッシュみたいな阿鼻叫喚が待っていた。
「ドアが閉まりまーす!ドアを閉めさせて下さーい!」
駅員の制止にもかかわらず、すし詰めの"みやこ路快速"はいつまで経っても乗る人が途切れない。結局、定刻の47分から3分遅れで発車。
「このコース、こんなに人気があるのか?!」
 まさかと思いつつ一瞬ヒヤリとしたが、親子連れにアベックに老夫婦…明らかに「18きっぱー」とは違う客層に、京都南郊・伏見稲荷の存在を思い出す。果たして臨時停車の稲荷駅でほとんどの人々が降り、ガラガラに。
ファイル 4-1.jpgファイル 4-2.jpg
ちなみにこの奈良線、快速は快適な新型車【写真左】だが、普通電車は普通電車で首都圏在住者には懐かしい「国電」【写真右】が楽しめる。内装もオリジナルに近いものが多く、ブァーン…というモーターまわりの排気音に同行の(鉄とは無縁な)弟が「あ!昔のハマ線の音だ!」と感激していた。
 いろんな事情から関西では他の区間にも「昔の中央線」「昔の京浜東北線」がゴロゴロしている。映画『パッチギ2』で、辛うじて外形が似ている某私鉄の車両をスカイブルーに塗り替え「昔の京浜東北線」としていたが、そんなことをしなくても国内にまだ本物があるのに…。


 40分ほどで京都府の南端・木津。10分あまりの待ち合わせで関西線上り(大阪発奈良経由)に乗ると、次の加茂が終点だ。いよいよ関西線の「超ローカル区間」。ここまでは毎時3本あるが、ここから東は毎時1本。25分ほど前に着いたのだが、早くも十数人の老若男女がホームにいる。
「乗車位置に鞄を置いてしまおう」
 そう思ったものの、どうした訳か上り列車に限って乗車位置の表示が一切ない。仕方がないので停車目標の標識やワンマン運転用のミラーからドア位置を二箇所に絞り、弟と手分けして場所を取る。
「不便だな…いったい、どういう訳なんだ」
 しかし、ほどなくその事情が分かった。次の電車が着いても上りを待つ客はあまり増えず、結局十数人のまま折り返しの上り列車が到着。ディーゼルエンジンの音を響かせた2両編成…2両と言っても通常より二回りは小さい車両なのだが、パラパラと集まった人々は全員無事に着席できてしまった。
「かりにも、これが『本線』なのか…」
 ローカル線になり果てているのは以前にも乗って知っていたし、座れたのはよい。ただ、前に乗った時は本数が少ないなりに混んでいた。「18きっぷ」のシーズン、それも最も人が動くだろう正月三が日の最終日でこの状況となると先行きが不安だ。
 ともあれ12時11分に東へ向けて発車。すぐに山中の登り坂となり、エンジンのうなりが止まらない。
ファイル 4-3.jpgファイル 4-4.jpg
【左…大阪~東京の道行きとは思えない山の中(加太~関)  右…こんな古さびた小さな駅も(加太)】

「亀山行きワンマン列車です…運賃・整理券はお降りの際に、一番前の運賃箱へお入れ下さい。定期券はハッキリお見せ願います…」
 ディーゼルの響き、空いたワンマン列車、細くなっていく川沿いに山を登る線路…東京と大阪の間にある情景だとは思いがたい。京都府から三重県へ入り、伊賀上野まで登り詰めると景色が開けるが、すぐまた山越えとなって、やがて液晶テレビでおなじみの伊勢国・亀山へと降りていく。1時間20分ほどの間、ずっとこんな調子だ。
 もちろん、もはや「本線」の機能はない。やや南を近鉄が走り、名古屋~大阪を最速2時間あまりで結んでいる(こちら経由だと乗り換え2回で4時間以上)。

 さて、加茂のすぐ次(といっても一駅が5分以上あるが)の笠置で、思わぬものを発見。
わかさぎ温泉・笠置いこいの館
 ホームに面した絵地図の中、駅の近くにそういう施設が書き込まれていた。
「……………」
 次の列車はかっきり一時間後。一か八かで降りて歩くと、5分もしないうちに新しめの日帰り温泉が…実にいい気分転換をした。大人ひとり800円(サイトのトップページを印刷して持っていくと100円引き…あらかじめ分かってれば)。
 実は「長旅の途中で一風呂」というのを期待して東海道線沿いを少し調べたのだが、駅の近場にはなく、あきらめていた………まあ、仮にあったら「18きっぷ」の時期に溜まり場にされ、とっくに有名になっているか無くなっているかだろう(場所にもよるが)。
 結局、入れ替わりつつも車内は着席可能な程度の混雑に始終し、草津線経由で柘植からでも十分に座れたのだが、笠置で温泉も見つけたし、とても大阪から東京へ向かっているとは思えない車窓を満喫できたので正解だった。

 14時35分、亀山着。15分後に出る名古屋行きを目指して人々が走るが、ここからは同じ2両編成でも普通サイズの電車。小型のディーゼルカーで全員座れていたのだから、焦らずともよい。
 ここでも赤福がまだ発売再開されていないのと、せっかく有名になったのに「シャ●プ饅頭」「ア●オス煎餅」といった土産物がない(あるわけないだろ!)のとが少し残念。件の工場は駅と無縁に近いらしく、広いホーム3本を備えたかつての要衝は閑散としていた。
 以降、名古屋まで約1時間半。そこからは東海道線ながら、またしても「強制長椅子区間」を新幹線でワープ(笑)。熱海でも立ち寄り湯(上記「資料」参照)に入り、午後10時半すぎ品川着。


ファイル 4-5.jpg
【山越えのトンネルにて(柘植~加太)】

豊橋で博多ラーメン……「駅の"なんでも食堂"」健在なり

 切符は取れなかったが不意に時間が取れたので、大晦日、「青春18きっぷ」を握りしめて東海道線の普通列車に乗った。
 東京7時24分発の伊東行きを選ぶ。この普通列車は特急の車両を使っていて、座席の掛け心地がいい。
 長旅だから、楽をしたかったのだ。なにしろ、このまま鈍行を乗り継いで、普段は新幹線や夜行で帰っている大阪まで行くつもりなのだから。

 過去にさんざん見てきた上で、「ひなび加減が足りなくて面白くない」と思い、新幹線や夜行列車でスルーしてきた沿線。
 しかし、かなり東京寄りも含めて、途中に「地方っぽい場所」があるのを発見または再発見できた。以下にささやかな例を二つほど。

ファイル 3-1.jpgファイル 3-2.jpg
【わずかに小田原の二つ先、根府川とその付近の車窓。海を間近に見下ろす眺め、そして思いのほか人家がまばら】

ファイル 3-3.jpgファイル 3-4.jpg
【名古屋都市圏・豊橋駅前のデッキより。大通りのすぐ先に山が見える様子は、中四国あたりの地方都市を思わせる】
【おまけ:わざわざ入場券を買っての撮影でシャッターのタイミングを派手に誤る筆者(苦笑)】

「ヤツらは毎回、こんなん見とるんだな…」
 …根府川や熱海の海を見ながら、東西の往来は必ず18きっぷで鈍行という若い顔見知りたちの顔が思い浮かぶ。なんだか悔しくなってきて、「よし、私もこれからは!」と気持ちを新たにするのだった………と言いながらすぐ先の熱海で新幹線に乗り換え、浜松までの「全列車全車長椅子(ロングシート)区間」をワープしてしまう。このへんがダメな大人の悲しいところ。



 さて、上記の豊橋に着くのがちょうど昼時。そこで一時間少々の昼食休憩を取る予定なのだが…。

「駅の『なんでも食堂』」
 と言って分かるだろうか。和洋の定食から麺類に丼物、コーヒー紅茶や酒・ツマミまで広く浅く揃えた食堂が、かつて大きな駅には必ずあった。立ち食いやスタンドコーヒーより少し高くなるが、重い鞄をしょった道中、駅にいながらテーブル席でゆっくりできるのは大きかった………が、そうやって長居されるのが災いしたのか(笑)、いまや食事なら立ち食いそばかスタンド風のカレー店、お茶ならスタンドコーヒーという具合に、客の回転が速いスタイルの店しかないことが多い。軽くビールを飲みつつ一服した後に食事とか、食後にコーヒーをすすりながら一服とかいった店は駅の外になるが、これが存外、大きな町でも簡単に見つかるとは限らないのだ。

 要は「多少の長居が許される様な品書き・構えを備えた店に入りたい」ということだが、豊橋駅がその点どうなのかが分からない。別に食堂でなくとも、たとえば東京駅や品川駅にある『サンディーヌ』みたいなカフェテリアがあれば十分なのだけれど…。
「……………」
 改札内に、立ち食いのきしめん店とラーメン店が各一軒。改札外はガラスと白い壁でできたスマートな連絡通路。新しそうな駅ビルと一体化した、スターバックスコーヒーが似合うそこに「なんでも食堂」などあるはずもない。
 仕方なしに北口のデッキへと出て、先述の眺めに出くわす。
 そしてふと振り返ると、駅ビルの隅に赤い提灯が見えた。
 御影石風の壁面が輝く駅ビルの二階、しゃれたパスタ店に追いやられる様にして、一番端っこに『博多ラーメン』と書かれた提灯がぶら下がっている。デッキに面して扉があり、生ビールがあることを示すポスター。
「ラーメンとビールだけ、って感じじゃなさそうだな…」
 計八人掛けのL字カウンターにテーブル席が二つ、という細長い店は空いていた。カウンターの卓上に灰皿を認めるやそこに座って隣へ鞄を置き、一人でいる真面目そうなお兄さんにビールを頼む。ジョッキは小ぶりだがビールはよく冷えていて、我慢していた煙草がうまい。
「えーっと…」
 卓上のメニューを見る。枝豆・冷や奴に始まって練り物に揚げ物と、厨房の狭さの割に豊富なツマミ。人が入り始め、注文が立て込み出していたので冷や奴を一つ。品書きにはご飯もあり、揚げ物はつまみのためだけじゃない様だ。"食前にビール"か"食後にお茶"かで迷っていたところでポスターを見てビールにしたのだが、コーヒーやジュースもちゃんとメニューにある。後ろのテーブル席からラーメンの匂いが漂い出した。何かを炒める音が止み、餃子が七つ乗った皿をお兄さんが他の客に差し出している。ジョッキになお残るビールを眺め、ゆるゆると二本目に火を点ける筆者…。
「…こりゃまさに『駅の"なんでも食堂"』じゃないか…助かるなあ」
実態はただの狭いラーメン屋なのだが、それが旅の途中の駅構内にあるのがありがたく、大食堂とは似ても似つかぬ店に思わず感嘆。
 ビールと冷や奴を片付けてから、食事をすべく品書きを見る。『博多ラーメン』と謳っているだけあって、一番上に書かれたそれが醤油ラーメン・味噌ラーメンより50円安い。
「きしめんを脇へ置いて、わざわざヨソの名物を食べるのも面白そうだ」
というのも手伝い、博多ラーメンを頼む。
 …その種のマニアが見たら怒り出しそうな博多ラーメンだったが、500円のラーメンとしては十分だった。
 まあ、きしめんが食べたければ、この先にも立ち食いがいくらでもある。

 以上でお会計は千円足らず。いい一休みをしたつもりが、まだ三十分も経っていなかった。デッキに出て、路面電車が走る駅前通りへと降りていく筆者。気温は低く乾いた風も冷たいが、ほんのり酔いが入った頬は温かく、快晴の空に太陽がある。この先、大阪までは普通列車といえども結構速く、13時に出ても17時頃に着ける。もし面白いものがあれば、多少時間を遅らせてもいい…。

 ともあれ、豊橋駅にはしっかり食べてゆっくりできる店が、駅にある。


【 次回は、復路の穴場と簡単な"まとめ"をお伝えします 】

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ

プロフィール

リンク集







過去ログ