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現代の寝台特急＆80年代末の客車急行の夜…鉄道ファンも一般人も楽しめる「鉄道もの」
→巻頭作『ハイケンスのセレナーデ』 挿絵＝緋莽総一郎

　出張の帰り、くたびれ果てて寝台特急「日本海４号」の客になった僕。
　深夜に目を覚ますと、ゴスロリファッションに身を固めた女の子が寝台に入り込み、無言で僕を脅していた。彼女の焦げ茶の瞳とラベンダーの香りに、僕は"鉄道少年"だった高校時代の一夜を思い出す。
　…十数年前のある晩。その夜にも同じ瞳と香りを持った、しかし美しい大人の女性が急行「だいせん」の寝台に現れた。すっかり魅せられてしまった当時の僕と友人・田村は、彼女の無賃乗車に手を貸すのだが…。

　過去と現在、無関係なはずの二つの夜が一つに結びつく………鉄道旅行歴二十年の筆者が送る、ちょっと濃いめの鉄道ファンタジー。

　　【読者からのご感想】

大正浪漫？！………氷雨降る古都の、和風味豊かな明るいミニＳＦ。
→もう一編『 大 雨 お ん な 』 挿絵＝由井ひな子

　小京都と呼ばれる地方の城下町。秋口の休日、雨が小降りになったのを見て、私は部屋着の浴衣一枚で買い物へ。
　けれども私は「小雨の時に出かけると大雨を呼ぶ『大雨女』」。この日もアパートから少し離れるや冷たい土砂降りに見舞われ、たまらず裏通りの軒下に駆け込む。と……
「…あれ、こんな店あったっけ？」
　廃屋に近いボロ屋ながら、暖簾が下がり、中から何かを煮る温かい空気が漏れてくる。雨と寒さから逃れたい一心で暖簾をくぐると、そこには私が大学で研究してきた通りの、大正昭和の世界が………。

　美酒美食あり、恋の予感あり、抱腹絶倒のドタバタあり。短い中で、本当の"レトロ"を追求したファンタジー。

　　【読者からのご感想】