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只見線往還記~『エッちゃん』の世界・1の1

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 昨年から今夏にかけて只見川沿い、つまり只見線沿いの山奥へ何度か出かけ、新刊の表題作『エッちゃん』を思いつきました。
 向こうしばらく、只見線・会津宮下とそこまでの旅程、そして最寄りの「街」である会津若松市内で見た風景を、何回かに分けてご紹介します。

 ちなみに"只見線"や"会津若松"というとお約束的に出てくるショット=鉄橋を渡る列車や鶴ヶ城・飯盛山の写真は出てきません。物足りない鉄男や歴女の皆様は「只見線」「会津若松 名所」などで画像検索をして、合わせてご覧下さい。
 それと今回は、写真・文章を最後まで準備済です。連載と言いつつ冬まで間が開いたり途絶したりというのは、今度こそいたしません(苦笑)。

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★1a.東京から只見線乗車まで

 以下、何回かの現地行きを総合して記事を書くが、主要な箇所に、この夏に行った際の着発時刻を添える。



【東北新幹線「つばさ115号」 東京12:08発】
 東京都区内在住の私は、東京駅に行き、そこから東北新幹線の客になる。
 早めに着いて、折り返しの車内整備を眺めながらホームの喫煙所で一服。
 会津方面への乗換駅・郡山へは毎時3本程度の便があるが、結果的に毎度、「Maxやまびこ」に山形方面の「つばさ」が併結された列車を選び、「つばさ」の方の席を取っている。

 他の新幹線車両に比べて「つばさ」は車体幅が狭く、ドアの下に転落防止のステップが出ている【上写真】。高さも低く、併結された 「Max」と一緒に見ると大人と子どもみたいで、窮屈な予感がする。
 でも車内【下写真左】には閉塞感などなく、座席【下写真右】もゆったりしていて、要は普通の特急列車の1列4人掛けだ。というより在来線に直通するから「普通の特急列車」になるしかないのだけれど、それにしても広げたテーブルとの間にゆとりがある。

 対して「Maxやまびこ」の背が高いのは二階建てだからで、車内に入ると、まず客室の天井が低い。客室とデッキの間の階段を含め、身長が高めの方は注意を要しそうなほど。
 一番困るのは座席だ。席数を稼ぐために前後の間隔が狭められ、背もたれを倒す余地も小さい。1列5人掛けなのは新幹線では普通だけれど、なぜか他の新幹線車両より席の横幅も窮屈な感じがする。
 そして車窓。新幹線で一階席に座ると本当に防音壁しか見えなくなってしまうのだが、二階席はグリーン席の分だけ普通席が少なくなっていて、「普通車指定席の二階(できれば3人掛けの真ん中以外)」という予約が案外難しい。
 もちろん「つばさ」以外にも二階建てじゃない列車はあり、それを取ればいいのだが、ランダムに「Max」だったり普通の車両だったりするので、なかなか旅行の計画に合わない。

 …本当は新幹線なんかじゃなく、昔ながらの特急や急行で旅立ちたいけれど、ないものは仕方がないし、あったとしても時間がない。だから、せめて在来線の特急列車に一番近いスタイルの車両で…「つばさ」を選ぶ本当のところは、そんな気分もある。
 実は、この「Max」+「つばさ」に乗ると郡山で会津若松方面との接続時間が最小になるのだが、それは後で気がついた。何時間も待つんじゃない限り、接続よりも旅情や快適さが大事。
 ちなみに、「えきねっと」の会員になると、座席表から空席を選んで指定席特急券の予約ができる。



 
【郡山着13:31 磐越西線快速3235M 13:47発】
 「つばさ」に乗ると1時間15分程度で郡山に着き、15~25分の接続で磐越西線・会津若松行きに乗り換えられる。
 15分の接続でも、新幹線ホームの喫煙所で一服して十分間に合う程度の距離。
 約1時間ごとに、快速か各駅停車のどちらかが会津若松へと走るが、2両編成が基本。座れるかどうかはその時によるものの、休日や休み期間の昼~夕方を外せば、少なくとも終点まで立ちっぱなしは避けられる模様。あとは当然だが平日の通学時間帯は混む。
 車内【左写真】はやや変則的なボックスシート。ただし快速の中に「あいづライナー」という列車【右写真】が3往復含まれていて、 こちらの座席は列車の外観どおり、特急と同じ。また6両編成で指定席(510円・もちろん全国の「みどりの窓口」で発売)もあるから、必ず座りたい向きにはおすすめ。

 郡山から会津若松まで、日中なら、普通でも快速でも1時間10分前後。
 地図上では途中に猪苗代湖に沿うような区間があるが、車窓から湖面はほとんど見えない。磐梯山が見えるはずだけれど、あいにく私の旅程ではいつも北側の遠くが霞んでいた。座席からの車窓よりも、左写真の人々のように立って前面展望を楽しんだ方がいいかもしれない。
 猪苗代あたりまでは高原風の開けた見晴らしが多く、その中を列車は、時々わずかに登り勾配を感じさせつつ高度を上げていく。それを見ながらボンヤリと日本地図を思うと、太平洋側・日本海側の分水嶺はずっと西、会津若松から新潟へ向かう山中にでもありそうだが、日本海に注ぐ阿賀野川は猪苗代湖から発していて、そのことだけで言うと会津若松はもう日本海側だ。
 だから猪苗代を過ぎたあたりから一転、分かりやすい下り勾配とカーブの連続になって、そのまま会津盆地に至る。今の電車は平地と変わらぬ走りを見せるけれど、SL+客車時代の運転は慎重を極めたという。ブレーキの過熱で止まれなくなった時に備え、勾配の途中にある磐梯町から長さ数キロの非常用線路が枝分かれしていた。
 そんな路線が、昭和はじめの上越線開通まで、東京~新潟を結ぶ主要ルートの一つだったのだ。




【会津若松着14:55 只見線発車まで散策と買い出し】
 ここだけ冬場の写真で申し訳ないが、会津若松駅は、立派なターミナル駅。
 『エッちゃん』には「五番線まである…」とだけ書いたが、ホームは昔ながらに長く、間にホームのない線路を挟んでいたり、周囲に車両基地や留置線があったりして、単に乗り場が五つあるというイメージよりずっと広い。構内のどこかで常に車両が動く、ないし動く準備をする姿がある。

 写真のとおり駅舎も大きく、コンビニタイプの売店や土産物屋、食堂に立ち食いソバ屋、みどりの窓口、観光案内所、キャッシュコーナー…と、ひとしきり揃っていて便利だ。それでいて改札口はもちろん自動改札機ではなく、なおかつ常時駅員が立っていて、同時に懐かしい匂いがする。懐かしいといえば駅舎の隣にドムドムバーガーがあり、コーヒーがおかわり自由だった(笑)。
 駅前広場も、写真に写っている範囲も十分広いが、写している私の背後に、さらにバスターミナルが広がっている。
 人口約10万人の街の代表駅、観光地の玄関口という要素もあるけれど、事実上4方向から路線が合流し、乗り換えの需要や鉄道業務が集積しているのも駅の規模に関係しているだろう。
 ただ街の中心部からは外れていて、駅の外の空は高い。とはいえ中心部にある若松城趾などへも結局ここからバスになるけれど、この街外れの駅が本当に最寄りなのは白虎隊の飯盛山と、「会津若松の奥座敷」と呼ばれる東山温泉ぐらいだ。


【只見線429D 会津若松17:01発】
 会津若松の市内については後の回に譲り、ここから只見線のディーゼルカーに乗る。
 会津宮下、会津川口、只見…といった只見川上流の村々まで、1時間強~2時間45分。
 若松発の只見線は一日7本しかなく、只見川沿いまで入る列車となると6本に減る。
 うち、5:59、7:37発の2本は若松に前泊するしかない(それも悪くないが)。かたや19:40、21:40発ではもちろん全線真っ暗闇。駅の徒歩圏に宿があるような場所は少なく、あっても個人経営レベルの小さな旅館だから、夜の10時11時なんて到着時間は嫌がられるだろう。
 沿線の村々へ、東京から常識的な時間帯に日着しようと思うと、13:08発・17:01発の両者しかない。
◆東京09:00→郡山10:22/10:46→会津若松11:52/13:08(会津宮下着14:36・会津川口着15:22)
◆東京13:08→郡山14:31/14:45→会津若松15:58/17:01(会津宮下着18:32・会津川口着19:01)
 こんな感じになるだろうか。ただ私は毎回、若松市内に寄り道したり前泊の上で途中下車したりするので、このプランで動いたことはないけれども。

【つづく】

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