2007夏発行の合同作品集「海が見える駅」より
 長編「海が見える駅」
 海辺の村で少女二人が繰り広げる、約60年の時を超えた大冒険
 表紙画:緋莽総一郎

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 前世紀の終わり頃の夏。日本海を見下ろす小さな無人駅・鎧に、十四歳の少女・夏美は降り立った。
 山に囲まれた海辺の村で、叔父夫婦に甘え、スケッチしながら十日ほどを過ごす…それを楽しみに毎年ここへ来ていた夏美だったが、今の彼女は学校生活の失敗がもとで疲れ果て、絵筆も生きる意味も見失っていた。
 静かで涼しげな村の空気、飄々とした叔父や叔母、そして毎年訪ねるうちに友達になった京子が、そんな彼女を優しく包む。しかし彼女の苦しみは癒えず、それを誰にも打ち明けられない…。

 着いた翌日、夏美は再会したばかりの京子に連れられて駅への坂道を登った。そこからの海の眺めが夏美のお気に入りだったからだが…。
「…なんか、駅、変わってない?」
「うん、変わってる…」
 コンクリートの駅舎が木造になり、無人のはずの駅には転轍機を動かす駅員や、手旗と謎の輪っかを持った駅長の姿があった。やがて二人の耳にけたたましい汽笛が聞こえ、黒煙を盛り上げて巨大な蒸気機関車が…。
 いつの間にか二人は、太平洋戦争末期・1944年の世界に迷い込んでいた。
 坂道を降り、ボロボロに変わり果てた村にまごつくうち、二人はサーベルを提げた警官に見咎められてしまう。
 追いつめられて今は叔父が住む家に駆け込むと、すぐに奥から細身の青年が。
「助けてください!訳はあとで話しますから!」
「どうぞこちらへ。お嬢さん方」
 青年はまるで楽しむかのように二人を優しく迎え入れる…時は戦時下。夏美たちは国家権力に追われているというのに…。
 過去と今と未来、出会いと別れと再会…その中で夏美の運命はどう変わるのか?
 長くて短い、心暖まるSF作品。SLやタブレット閉塞好きの鉄道ファン諸兄、近現代史好きの皆様もぜひ。



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