= 初版・2008年夏 =
「大きな杉の木の下で」
 癒し、絶望、希望…ヘタレ吹奏楽部員・晴香と可憐な謎の少年の出会い。
 表紙画:榎よしひろ


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 夏休みなかば。名門吹奏楽部の二軍部員・晴香は、昼間から帰りの列車に揺られていた。
「う〜ん…」
 過酷で先の見えない練習漬けの毎日。その練習が急に昼までになり、友達と遊びまくろうとした矢先に、彼女は体調を崩して家に帰る羽目になっていた。
 頭痛と吐き気を、効き過ぎの冷房とエンジンの振動が増幅していく。たまりかねて手前の駅で飛び降りると、よりによって屋根も何もない炎天下の無人駅。
 唯一、ホームの先に大きなヒマラヤ杉が影を作っている。這いつくばるようにその木陰へ飛び込むや、晴香は気を失ってしまった。
「姉ちゃん、大丈夫か?」
 かわいらしい声、そして額のひんやりした感触に晴香は目を覚ます。
 十歳ぐらいの男の子が心配そうに彼女を覗き込み、額に冷たいものを当ててくれていた。
「ありがと…ん?」
 が、額から生温かい液体が流れ落ちていて、顔はおろか襟元までベトベトになっている。
「礼は、俺が食べとったアイスに言うてや」
「そんなもん人のおでこに当てるなー!」
 飛び起きて水を探した晴香だが、蛇口も自販機も見あたらず、駅のまわりも見渡す限り田んぼしかない。
「なあ。水があるとこ知らん?」
「知らんことも、ないで」
「ホンマ?!連れてって!」
「ええで!…けど、そのかわり姉ちゃん、俺と付き合うてくれるか?」
「はぁ……?!」
 ヒマラヤ杉の駅から始まる、おかしくて甘酸っぱくて不思議なエピソード。
 そして、ちょっと元気が出る物語。



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