'12夏コミ新刊
すべての「こんなはずじゃなかった」人たちへ

 短 編 「 帰 る 夏 」 
 挿絵:岡崎シゲル A5版58ページ

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 恐ろしい夢から覚めると、窓越しに故郷の田んぼと母校が見えた。
「私、帰ってきたんだ…」
 その近くを目指してはいたけれど、そこに帰るつもりはなかった。ううん。帰ってきてはいけないのだ。優等生だった「私」は東京で道を踏み外してダメ人間になり、そのことが噂になっているはずだった。
 なのにおそるおそる降りてみると、顔なじみだった駅員さんも駅前のパン屋のおばあちゃんも駐在所のお巡りさんも、何事もなかったように笑顔で私を出迎えてくれた。少し静かすぎるのが気になるけど、何もかもが昔と変わっていない。
「私のことは町中の噂になってて恥ずかしい、って親が言ってたけど…」
 そう思いながらも私は、懐かしさにかられて高校や家の方角へ足を向ける。歩き出すとワンピースの裏地の感触が制服のスカートみたいに思えて、昔の学校帰りみたいな気分がしてきたが…
「…なんだかちょっと、昔のまま過ぎる気がする」
 あまりにも昔と同じままの故郷の町。その真相と、そこで私が知ったことは…

 こんなはずじゃなかった、という思いで辛い日々を生きる人たちに贈る、ミステリアスな短編。
 挿絵は女流漫画家・岡崎シゲル氏が一年半ぶりの登板。



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